病院事情 2.転院事情と看護師の取り合い
TETSUYAです。
先の記事に、意外にご好評をいただいているようなので。
頑張って続きを続けます~~
先の記事では、病院の収入の大部分は公定価格であり、努力をしても元を取ったら削られるのを繰り返しているので、国が何か政策を出したらダボハゼのように食いつく習性があることを指摘しました。
ではその収益が、何で決まるかを病院機能によってみていきます。
なぜ転院させられるか
人の一生で、病気やケガ、手術などに関して、一番お金がかかるのは…
そう、入院直後です。
「統計的に」一番お金がかかる、あるいは、状態が変わりやすい日数を「急性期」とします。
また、病状ごとに「リハビリ」で回復・改善が見込める日数を「回復期」と言います。
おおむね、6か月以内です。つまり手術や急変処置開始から6か月はよく治っていきますが、徐々にその速度は緩やかになり、6か月を超えて「目に見えてよくなる」人は少ないということです。
その後を「維持期」と申します。昔は「慢性期」と呼ばれました。
そして、維持期のうち、回復に国の医療費を掛けるのをやめて「自宅」(もしくは介護施設)での生活優先で行ってもらう時期を「生活期」と呼びます。
そして病期ごとに病院の機能を規定されています。
国に「こういう会社を作れ」って言われて従う経営者がどこにある(あるけど)。
なんでそんな命令をみんなが聞くのか?
まず前提として。
医師や看護師、あるいはリハビリが多いほど、入院日数が少なくても患者は回復する…という研究結果が、アメリカでたくさん出ています。
(アメリカは皆保険じゃないのでこういう実験的な研究ができます)
それがこのように日本の施策にも反映されるのです。
つまり。
厚労省は医療費を節約するために、統計をもとにして上記のように病期を分類し、価格を厳しく設定しています。
ベッド単価は病期に沿って(日数が立つほど)安くなるよう設定されています。
ベッド単価が安いということは、手術・処置や薬を少なくして、医師や看護師も少なくせよ…ということであります。
単価が安い代わりに、人件費も安くてよいということなのです。
なので。
すごいドクターを雇って保険点数(公定価格)の高い手術をバンバンするか、
リハビリにお金をかけるか、
いろいろカットしてとりあえず入院ベッド数を確保するか、
あるいはさらに費用・人件費の安い介護保険を利用するか、
法人が戦略的に選ぶわけです。
それぞれの入院日数はおおむね(うろ覚えですが)
・急性期 14日以内
・回復期 3~6か月(病名によっては2か月)
*ただし6か月っていうと「高次脳機能障害」を併発した重度例です)
・療養病床 6か月
・老健 3か月
とされています。
だから病院では、「(この日数以内に)転院先を決めてください」と言われるのです。
(実質の「平均在院日数」とは違いますので念のため)
人員配置基準
こういう考え方に基づいて、病床は「急性期」「回復期」「慢性期(療養期)」と分類され、それぞれの人員基準(最低何人必要か)が決められています。
特に看護師の人数は、ベッド単価に直結します。
(夜勤とかあるので計算はとても複雑です)
急性期を選んだ病院は、ベッド単価も高いが、医師も機械もその他諸々も必要です。
もし看護師をそろえ損ねたら… 費用は高いまま、ベッド単価(収入)が下がります。
赤字です。賞与が出ません。ますます看護師が逃げます。
また、医療の進歩に対応するため、診療報酬の改定のたび、人員基準が変更になり、高度医療をする病院は看護師をたくさん使わねばなりません。
人数だけでなく、加算に関係する資格もいくつかあり、そんなスーパーナースはどんな病院でも引く手あまたです。
そうすると。
看護師の取り合いになるのです…!
平成18年度の改定で、7対1基準の導入により大病院が看護師を囲いこみ、えらいことになったのは記憶に新しい(17年分記憶が飛んでるのか?)。
病床削減へ
そもそも入院しないとお金がかからないので、国はできるだけ入院させないよう病床削減を推し進めてきました。
なに、認可しなければいいのです。
病床数は認可が必要ですから。
特に、人口減少地域では、病床は減らされていきます。
こうしてますます急性期病院は大都市に限られるようになり、せっかく入院した病院からは「早く退院してください」「老健へ行ってください」が加速するのでした。
医療・介護にかかわる費用は、いつも「ギリギリ」に設定されているのです。
そこへこの一連のコロナ施策だ。
現場の疲弊も限界です。
10月には看護師離職率調査が始まると思うですが(うろ覚え)、今年はどうなるか楽しみ恐ろしいです。