TETSUYAの航海

テツガク好きな医療人です。時々イラスト練習中。

決定版:中性脂肪とコレステロール

0.中性脂肪コレステロールの理解

「これ捨てろー」と言いたくなる(ああ言ってしまった)が、体にはとても大切なこの脂質たちの理解を深め、コレステロールとの付き合い方を身に着けましょう。

 

1.中性脂肪コレステロール

中性脂肪(トリグリセリド)は筋肉で燃やされる重要なエネルギー源です。

 

原料となる脂質はまず分解されて、脂肪酸などとして貯蔵されます。

取り込んだ脂質がそのまま中性脂肪になるわけではありません

肝臓は糖質(グリセロール)に脂肪をくっつけて、中性脂肪を合成します。

 

糖質や中性脂肪は、脳や内臓筋(平滑筋)、骨格筋・心筋(横紋筋)を動かすために血管を通って配られます。

余れば皮下脂肪内臓脂肪として貯蔵されます。

 

コレステロールは、細胞壁の材料となる脂質です。髪や肌のつやつやに不可欠です。また、ホルモンの基材、胆汁酸の材料です。

食物から摂るのは所要量の20~30%で、多くは再利用です。肝臓に貯蔵されています。

 

中性脂肪コレステロールはどちらも脂質の一種ですから、そのままでは水(というか血液)に溶けませんので、リポタンパクにくっついています。

大きさによって名前が付けられています。なぜ区別するのかというと、働きが違うからです。

単純に言うと、脂質をたくさん含んだ大きな袋はコレステロールを放出し、からっぽで小さな袋はコレステロールを回収するのです。

 

2.LDLコレステロール

小腸中性脂肪コレステロールをリポタンパク袋にたっぷり詰め込んだ巨大な脂質の物体、”カイロミクロン”を作ります。

 

“カイロミクロン”は、通りすがりの筋肉で少し中性脂肪を配りつつ、”カイロミクロンレムナント”になって肝臓に貯蔵されます。

 

肝臓で少し小さく組み直されて、”VLDL(ヴェリー・ロー・デンシティ・リポプロテイン)”となって肝臓を出発します。

 

“VLDL”は、筋肉で中性脂肪を燃焼させつつ”IDL”になります。

 

さらにどんどん中性脂肪を筋肉で燃やして小さくなって、ほぼコレステロールだけを詰め込んだ“LDL”(ロー・デンシティ・リポプロテインコレステロールまたは“LDL”になります。

 

こうしてLDLコレステロールは、血管をめぐってコレステロールを全身に配って小さくなりながら、肝臓に戻ります。

 

しかし戻しきれない過剰なLDLは血管壁に染み込んでしまうのです。

古くなると、活性酸素の働きで酸化していきます。これが血管壁の中でプラークを形成します。回収しないといけません…

*もともと酸化している酸化コレステロールなんてのもあります。危ないね。

 

3.HDLコレステロール

”HDL(ハイ・デンシティ・リポプロテインコレステロールまたは”HDL”脂質があまり入っていないリポタンパクです。

タンパク袋の原料はLDLと共通です。

 

HDLコレステロールは回収屋です。血管壁に沁み込んだLDLコレステロールを引きはがし、コレステロールを取り込んで、肝臓に運んでいます。

 

いわば、LDLの重さは体内のコレステロール配布力HDLコレステロール回収力なので、それぞれの重さを「悪玉」「善玉」と称して説明しやすくしているのです。

 

4.善玉悪玉

HDLはリポタンパクの袋(餃子で言うと皮だけ)です。小腸・肝臓・その他コレステロールのいそうなところで作られますが、脂質が多いほど、カイロミクロンVLDLができてしまうので、HDLは少なくなります。

「具(中性脂肪コレステロール)があふれているので、皮だけ餃子(HDL)を作りたくても、身だくさんの餃子(LDLなどのでかいリポタンパク)が出来てしまう」のです。

水餃子

だから、脂質が多すぎると、HDLの減少・LDLの増加となって現れるのです。

 

繰り返すと、HDL以外は中性脂肪を配って歩くリポタンパクです。

 だから最近では、合わせて”non-HDLコレステロール値” (総コレステロール重量からHDLを引いたものです)を見ます。

 

5.動脈硬化

コレステロールは、体中の細胞にセメントや壁材として配られますが、余って回収されたものはちゃんと再利用または排泄処理されます。

しかし、HDL(またはHDLコレステロール)が少ないと、回収されないコレステロール、すなわちLDLコレステロールは「その辺に溜まって」血管壁に浸透し(もぐりこみ)、酸化して動脈硬化(動脈壁の肥大化)を進ませます。

 

これが固くて黄色いこぶのある、ぼこぼこに膨れた血管です。

 

動脈硬化」病理コア画像@日本病理学会教育委員会より

 

血管が弾力を失い、こぶで狭くなるため、少しずつ血圧は高くなり、血管が詰まったり裂けて血を吹いたりするのです。

 

また、糖尿病を併発している場合(よく併月しているのですが)、LDLの割合が増えるとインスリンがますます効きにくくなりますので、インスリン分泌は上昇(汚れが多いと洗剤をたくさん必要とするようなもの?)し、長期化すると、インスリン分泌能力が衰えていきます。こうなると糖尿病の悪化をとめるものはありません。

 

そして、体脂肪の蓄積は、脂肪細胞からの「生理活性物質」を誘発します。

血圧を上げたり、動脈硬化を進めたり、免疫を下げたりというように、体に負荷を掛けるように仕向けるのです。「しんどいことをさせ」て、脂肪を減らそうと体が訴えているのです。

 

長生きしたくなぞないとうそぶいているあなた…

こういった障害は、体の末梢で少しずつ起こるのです。一発で死ねたらいいけど、大抵そうではなくて、だんだん痛くなり、だんだん不自由になるのです。人生は、決して短くないですよ…!?

 

6.対策。

食事療法

脂質の摂取を減らすと、LDLの製造を減らせると思うかもですが、コレステロールの多くは再利用だから、効果は(すぐには)出ないのです。息の長い取り組みが必要です。

また、「食事療法」というと、総量を減らすことが予想されます。そして小腹を満たすような行動が増えるのです。

そうではなく、脂質や糖質の割合が下がるよう、バランスを変えなくてはなりません

タンパク質の摂取が減ると、そもそもHDLを作れなくなります。

 

運動療法

すぐに役立つのは筋肉を動かすことです。

太古の昔、飢餓状態であった人体は「大切なコレステロール」を「ためる」ように設計されています。しかし運動量の減少した文明人は、「ためない」よりも「使う」ことを増やすべきなのです。

つまり。

コレステロールを減らす”ということは、HDLを増やすことなのです。

 

激しい運動までは求めません。

まずは負荷の少なく頻度の多い運動から。

椅子でも手や足を動かしているとか。

暇があったらずっと転がってストレッチやヨガをしているなんてよいですね。

ああ、脂肪を燃やすには酸素が必要ですから、しっかり呼吸をしましょうね。

 

燃える男(この後爆発します)

 

筋肉を動かす時間を長くすること。

寝たきり座りっぱなしにならないことです。

 

しかも、筋への刺激は、HDLを生みやすくするのです!

筋に刺激を与えると、具(中性脂肪コレステロール)は筋に回るので、(皮だけの)HDLが増えるのです。

 

もちろん、筋活動が増えれば、中性脂肪も減りますね。

中性脂肪のもとはどこにあるのかって? そりゃ…内臓脂肪や皮下脂肪ですよ…

 

7.締め

LDLとHDLのまことの姿、お判りいただけましたか。

少しでも、みなさんの安心に寄与できればうれしいのですが。