小説「仮題・ヒギンズ教授の憂鬱」第一章-1
文・絵 TETSUYA
本作でのイラストは速度重視で基本鉛筆のままですので、お見苦しきはご容赦ください。
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ここはいろいろな大学のある旧都。
高校の先輩後輩たちとも、卒業以来の再会を果たしたりした。
後輩の朝倉美智も卒業してこのまちにやってきた。
「倉科せんぱあい! 府民としても後輩になりました!」
「おう、よかったな」
大学は違えど、高校のクラブでの先輩後輩で、気安い仲であった。
何でも相談してこいと声を掛けておいた。
「遊びに行っていいですか!」
「そういうのは彼氏にしたいひとにいえ」
「え~だからこそじゃないですか」
「俺はロリコンじゃない! お前は対象外!」
…まあ、ガキであった。
ゴールデンウィークも過ぎ、そのミチがこんなことを言い出した。
「…大学のクラブの先輩が好きなんです」
と相談してきたときには、驚き、成長したなあと、しみじみ思ったものだ。
しかし。
「でも付き合いたいとは思わない…」
と続けた。
ドテッ(コケた)。
「見てるだけでいいんですぅ…
自信ないし…
向かっていく方法もわからない…」
中学生か。
本人が解決したいと言わない以上、これは相談ではない。
しかし、おせっかいな気分がムクムク頭をもたげてくる。
本当はそれは願望なんだろう? だから悩むんだよな。
壊れる時が怖くて踏み出せないんだよな。
俺もそんなころがあったぜ?
拗ねながら「だって…」と続ける後輩の顔を見ながら自分の思いにふけってしまっていた。
つい尻をたたきたくなった。
こいつを使って、その先輩とやらに勝負を仕掛けてやろうか。
まあどっちにも損にはならないだろう。
くっついたとしても。だめだとしても。
恋は重ねるがいい。ことに若いうちに。
「ミチぃ! 男心を捕まえる作法を教えてやる!!」
「ひえっ!? なっなんですか!?」
「S先輩に近づく方法を教えてやるよ」
「えっえっ!? いや、そんなのいいです!?」
「じゃーさ…この先どうすんの?」
「倉科先輩んちでごろごろしてたらいいや」
「俺が困るわ!…いやそういう話じゃない」
「いつかは、でいいです…」
口は引き気味ながら、目はこっちを見ている。興味津々だ、よし。
「いつかは、だれかを捕まえたいんだろ? それが今でも、Sでも差し支えないだろ?」
「そりゃ…」
「まずは絶対「先生」の言うとおりすること!」
「はい・・・!」
ヒギンズ教授気取りの、「倉科哲也の恋のレッスン」の始まりであった。