TETSUYAの航海

テツガク好きな医療人です。時々イラスト練習中。

小説「仮題・ヒギンズ教授の憂鬱」第一章-7

 

allnightsailor.hatenablog.com

 

より。

 

「…先輩? 練習を始めたころ、『ローマの休日』観たっていったでしょう? 倉科先輩はオードリー・ヘップバーンが好きなのかなって思ったの。だから一生懸命オードリーばっか観たわ」

そこにいるのは、俺が自分好みに合わせて、育てた女。

マイ・フェア・レディもご存じですか? 知ってるよね…ここにいるのは…イライザと…ヒギンズ教授よ」

 

ブルルル、プルル。

LINE着信。

俺かー?

いや。

ミチだ。

「Sから、だな?」

どこか苦渋の表情でスマホを見るミチに、声をかけた。

 

「来る前に、お付き合いを解消したいって伝えたの。話し合ったけどー わかってはくれなかった」

「どうするんだ?」

にっこり。

「もう…このアドレス、ブロック、するね」

スマホを取り上げて、さっさっと、ミチは「過去の男」を切り離した。

「ほら…私、フリーになりました♡」

勇気が要ったのよ、といいながら、カーディガンを脱いだ。白い肩があらわになる。

「ね…」

そういって、俺ににじり寄り、指を重ねた。

電流が走ったように俺の指がピクリと跳ねる。

ミチは目を閉じ、軽く顎を上げた。

 

ばかな。なんとか優位を保て。

「キスだけだ…授業料にもらってやるよ」

 

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肩をぐっとつかみ、背中を抱き寄せ、まっすぐ唇を合わせた。

すっと背中をなでおろす。軽くのけぞるミチ。

唇が離れた後、肩の手を頭にまわして、抱いてやった。…いや、これは礼儀だ。他のナニモノでもなく、ただの礼儀だ。いい女への。

ミチは脱力して、薄くあいた唇からはあ、はあと荒い息を吐き、ふうっとため息をつく。唇は赤く光る。

そしてかすかな声でつぶやいた。

「…素敵…」

やっと目を開けたミチは濡れた唇で声を漏らす。

「ほらぁ…なんでこんなに…違うの…」

比べてほめるのは、男を奮い立たせると知っていてやっているのか。

教育の成果か、天性のものなのか。

「ね、これ、哲也の魔法…?」

 

ふうっとため息をつく。

「まだ…あ…ふ」

もう一度目を閉じ、少し震える赤い唇をくぅっと持ち上げる。

もう俺は吸い寄せられるしかなく、もう一度キスをした。

ミチの白い腕がとんできて、俺に絡みついた。

 

「2回目のキスは…なに?」

息をのんだ。

これは卒業記念では済まない。

「お前の努力に応えたんだよ…頑張って化けたからな」

 

 

「ああ、帰らなくちゃ」

まだその場で呆然としている俺をすり抜けて、ミチはさっと起き上がり、薄く白いカーディガンを羽織った。

「今日はありがとうございます」

しなやかな動きで、いつの間にか、玄関にいる。

なんだと。俺がしてやられるなんて。

余韻と未練。

教えの通りと分かっていても、気をひかれてしまう。

ゆっくり立ち上がった。

 

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唇の分、少し大人になったミチは、うれしそうにつぶやいた。

「…卒業したらね、先生と生徒じゃ、ないんですよ、て・つ・や先輩…」

目を見開く俺の目の前で、ドアがゆっくりと閉まった。

俺は馬鹿みたいに立ち尽くしていた。

               (第1章・完)

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TETSUYAです。

テツガクとコイバナを愛する文芸部なので、小説を書き始めました。

文芸部活動なので、ブログとしては変化球だけどまあいいかと思ったのですが。

小説ではなかなか皆様の目に留まってくれないようです。

第1章を終わらせて、あとは需要があれば考えます。

やはり、正統派の努力をすることにします。

あと、はてブロのシステムがよくわかっていないので、どんなボタンを押せばどうなるのかとか、わかり始めたら、はて民の皆様の高度な交流に入っていけるのでしょうね。