航海~9.第三の青春。でも時間がないっ!
働きながら修士を目指す、社会人大学院生になろうとした途端、父のガン死に見舞われながら、大学院生としての生活を行く「航海」第9回です。
より。
学園生活は充実していました。
指導教授は、功成り名遂げ、学者肌で欲は最小限、かつ博覧強記、しかも、学問の組み立てに関しては瞬時に見事な論理展開をしてくれます。
そして規則にうるさくなく、かといって放任ではなく、むしろ研究に関してはこれでもかというほど資料の読み込みを(無邪気に)迫るのでした。
在学中に私の購入した専門書は24冊になりました。論文の参考文献61編に全部投入されています。
そして、仲間たちの交流では、第三の青春を堪能しました。
(私は文系と理系の二つの大学に通い、第二の青春まで謳歌していましたから、これが第三の青春です)
みな大人ですから、一線を保ちつつ…交流を楽しむのです。
この欠食児童に、休憩時間のたびに、飴とかクッキーとか恵んでくれます。
「TETSU、差し入れだよ」
「TETSU、今日の配給」
餌づけ(笑)。
帰りの電車も何となく女性グループと合わせあいます。
エレベーターで待ったり待たれたり。
降りてもラインのやり取りがあったりします。
スタンプがずいぶんうまくなりました。ほぼフォントを打たないで話が進むほど。
私、スタンプの魔術師と呼ばれました。
飲み会もあります。
みな、職場では振り切っている人たちなので、遠慮がなくタブーもなく、考え方が面白い。
(振り切っている…の感覚は、とことんいいことを追求し、上司も同僚も使いまくるカリスマ性を備えているってとこでしょうか)
さてお開きです。
なんと、一番美しいユキさん(仮名)が同じ電車。
降車駅が隣なのでした。びっくり。ひそかな楽しみができました。
ま、めったに一緒になることはありません。
研究テーマが違うと、まったく時間配分やタイムテーブルが違うからです。
もう一つ微妙な理由が…
それは…
彼女は急行の止まる駅。
私は各駅停車しか止まらない駅。
住む世界(まち)が違うのです…
しかし、二日続けて、私が帰りに乗ったその電車に、彼女がいたのです。
ほんとに驚いていたので、待ち構えていたのではなさそうです。
待ち構える理由もありません(笑)。
「おー!」
「あらー! うそっ、写真とっとこ」
パシャ。なぜか証拠写真を撮られました。
私もカメラを向けます。
少しは嫌がる彼女でしたが、まあ、いいわ、とポーズをとります。
「可愛く撮らないと承知しないわよ!」
彼女は年下ですが、命令し慣れてるというか、私がされ慣れてるのか(笑)。
さて、学習意欲は私も含めてみな相当なものです。社会人になってから学ぼうというのです。終了後すぐにでも自分が社会の役に立つほどに。それはもう前のめりです。
学びへの渇望と、命への関心は高い。
しかし、勤務を平常に保ったまま、夜間の大学院に通い続けるために、時間がいくらあっても足りません。
電車の中で仮眠し、帰宅してすぐ資料を整理しないと、プリントがどうなっても知りません状態です。
プリントをすばやくルーズリーフにできるよう、グリッサーというスライド式パンチを購入しました。以前、管理職だった時、書類を綴じるために使っていたものです。
紙を突っ込んで、リング式パンチ穴カッターのつまみをスライドさせます。
「グリグリグリ…」これで30穴の紙の出来上がりです。
メーカー希望小売価格8800円、amazonで6000円です。
https://www.carl.co.jp/product/gurissa/
土曜も朝から夕方までは授業とゼミです。
(土曜は学友ともよく合うので、精神的には楽しい時間です)
日曜にはゼミのレジメとレポートを1日中書いています。
そして、個人の事情ですが、父の死、喪主としての新たな社会の役割の重責、また昼夜問わず時間を削られることで、心身に疲労は蓄積されていきます。
それは、まるで。
数年前の抑うつで休職に至った経過をなぞるようでした。
(続く)