再訪した思い出。
大学時代、とある後輩がスパイスやコーヒー豆に詳しかったのです。
ルーを使わずスパイスやトマトだけで煮たてたものを、「カレー」といってふるまってくれました。
驚きでした。そして絶品。
小麦粉はカレーにはいらないのです。
それを教えてくれました。
また、サイフォンでコーヒーを挽くことを教えてくれました。
コーヒー豆を挽き、アルコールランプに火をつけ、コポコポ煮立てたのでした。
そのうち、仲間を集めて、学園祭に喫茶店を出店しました。
ペーパードリップのコーヒーより10円高いサイフォンコーヒーをメニューに載せました。
サイフォンは大忙しで、後悔しました。もっと価格を高くすればよかった。
そうして、それから私の部屋にはサイフォンがあったのです。
結婚するまでは。
また、ある冬の日、彼はチャイをふるまってくれました。
私の知らない文化。
香ばしく、ピリッと微かに辛く、芯からほっとする飲み物…
牛乳の苦手な私にも、いくらでも飲めました。
やがて、私は先に卒業し、彼とは没交渉になってしまいました。
その後、街でいくらチャイを頼んでも、あの味と香りがしてこないのです。
あれは、心づくしの、本気のレシピだったのだ。
わかったときはもう遅い。
妻は出来合いのチャイを、おいしい、おいしいと言って飲みます。
私は、心の中で、首を振ります。
チャイはそんな味じゃないんだよ…と心の中で、つぶやくのでした。
妻には言えない、思い出なのです。
しかし時代は。
再び彼に私を引き合わせました。
OBとして訪れた大学の演奏会で。
彼は客席に、いたのです。
ただ…大人になった二人は、もうお互いに手作りのカレーや飲み物をふるまうこともないのでした。
病院事情 2.転院事情と看護師の取り合い
TETSUYAです。
先の記事に、意外にご好評をいただいているようなので。
頑張って続きを続けます~~
先の記事では、病院の収入の大部分は公定価格であり、努力をしても元を取ったら削られるのを繰り返しているので、国が何か政策を出したらダボハゼのように食いつく習性があることを指摘しました。
ではその収益が、何で決まるかを病院機能によってみていきます。
なぜ転院させられるか
人の一生で、病気やケガ、手術などに関して、一番お金がかかるのは…
そう、入院直後です。
「統計的に」一番お金がかかる、あるいは、状態が変わりやすい日数を「急性期」とします。
また、病状ごとに「リハビリ」で回復・改善が見込める日数を「回復期」と言います。
おおむね、6か月以内です。つまり手術や急変処置開始から6か月はよく治っていきますが、徐々にその速度は緩やかになり、6か月を超えて「目に見えてよくなる」人は少ないということです。
その後を「維持期」と申します。昔は「慢性期」と呼ばれました。
そして、維持期のうち、回復に国の医療費を掛けるのをやめて「自宅」(もしくは介護施設)での生活優先で行ってもらう時期を「生活期」と呼びます。
そして病期ごとに病院の機能を規定されています。
国に「こういう会社を作れ」って言われて従う経営者がどこにある(あるけど)。
なんでそんな命令をみんなが聞くのか?
まず前提として。
医師や看護師、あるいはリハビリが多いほど、入院日数が少なくても患者は回復する…という研究結果が、アメリカでたくさん出ています。
(アメリカは皆保険じゃないのでこういう実験的な研究ができます)
それがこのように日本の施策にも反映されるのです。
つまり。
厚労省は医療費を節約するために、統計をもとにして上記のように病期を分類し、価格を厳しく設定しています。
ベッド単価は病期に沿って(日数が立つほど)安くなるよう設定されています。
ベッド単価が安いということは、手術・処置や薬を少なくして、医師や看護師も少なくせよ…ということであります。
単価が安い代わりに、人件費も安くてよいということなのです。
なので。
すごいドクターを雇って保険点数(公定価格)の高い手術をバンバンするか、
リハビリにお金をかけるか、
いろいろカットしてとりあえず入院ベッド数を確保するか、
あるいはさらに費用・人件費の安い介護保険を利用するか、
法人が戦略的に選ぶわけです。
それぞれの入院日数はおおむね(うろ覚えですが)
・急性期 14日以内
・回復期 3~6か月(病名によっては2か月)
*ただし6か月っていうと「高次脳機能障害」を併発した重度例です)
・療養病床 6か月
・老健 3か月
とされています。
だから病院では、「(この日数以内に)転院先を決めてください」と言われるのです。
(実質の「平均在院日数」とは違いますので念のため)
人員配置基準
こういう考え方に基づいて、病床は「急性期」「回復期」「慢性期(療養期)」と分類され、それぞれの人員基準(最低何人必要か)が決められています。
特に看護師の人数は、ベッド単価に直結します。
(夜勤とかあるので計算はとても複雑です)
急性期を選んだ病院は、ベッド単価も高いが、医師も機械もその他諸々も必要です。
もし看護師をそろえ損ねたら… 費用は高いまま、ベッド単価(収入)が下がります。
赤字です。賞与が出ません。ますます看護師が逃げます。
また、医療の進歩に対応するため、診療報酬の改定のたび、人員基準が変更になり、高度医療をする病院は看護師をたくさん使わねばなりません。
人数だけでなく、加算に関係する資格もいくつかあり、そんなスーパーナースはどんな病院でも引く手あまたです。
そうすると。
看護師の取り合いになるのです…!
平成18年度の改定で、7対1基準の導入により大病院が看護師を囲いこみ、えらいことになったのは記憶に新しい(17年分記憶が飛んでるのか?)。
病床削減へ
そもそも入院しないとお金がかからないので、国はできるだけ入院させないよう病床削減を推し進めてきました。
なに、認可しなければいいのです。
病床数は認可が必要ですから。
特に、人口減少地域では、病床は減らされていきます。
こうしてますます急性期病院は大都市に限られるようになり、せっかく入院した病院からは「早く退院してください」「老健へ行ってください」が加速するのでした。
医療・介護にかかわる費用は、いつも「ギリギリ」に設定されているのです。
そこへこの一連のコロナ施策だ。
現場の疲弊も限界です。
10月には看護師離職率調査が始まると思うですが(うろ覚え)、今年はどうなるか楽しみ恐ろしいです。
病院事情 1.病院はなぜ不正をするのか
TETSUYAです。
理学療法士です。
以前勤めていた病院では、リハビリ課の管理職だったこともあります…経営会議にも出ていました。
採用にも毎年かかわっていました。人数枠を獲得するのは大変でしたが、採用に関するスケジュールもツールも面接も、ほぼ全権を持たされていました。
理学療法士会(地方士会)の役員もしていました。
社会人大学院では日本各地の病院の経営者にインタビューする研究をしました。
今は訪問看護ステーション勤務の訪問リハビリです。
そんなわけで、結構ベテランですので、少しは医療界のことを語れると思います。
つらつらお話ししてみます。
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まずは病院が「儲かるかどうか」という話です。
普段はもうかりません。
医業利益だけでいえば病院の6~7割は赤字です。
「2022年度病院経営定期調査集計結果」
https://www.ajha.or.jp/topics/4byou/pdf/221214_2.pdf
だからなのでしょうか?
こういう不祥事が、「えっ」というくらい広範に起こるのは。
儲けてはいけないという意味ではなく、利益を組織運営以外の、たとえば役員報酬として分配してはいけないという意味であり、病院のため(人件費含む!)に使う・貯めるのは何ら問題はありません。
なので、「私腹を肥やす」どころか、「赤字に備えてため込む」ことすら至難の業なのです。いやあの手この手でやりますけどね。
病院の収入は「保険収入」と「保険外収入」に分かれますが。
ほとんどは「保険収入」です。
保険外の「自由診療」をするなら「保険診療」が認められなくなります。同時にやるのは「混合診療」とされます。
(歯科や高度先進医療など一部混合診療の認められることはあります)
この「保険診療」という名の、「公定価格」が曲者です。
4年ごとに(実質2年ごとに)「診療報酬改定」がありますけど。
ひどいのですよ。
4月からの価格改定や報酬体系の改定について、1月ごろにアドバルーンを上げて、3月にやっと値段を決定するのです。
その資料たるや、「中医協答申」が50~120ページほど(うろ覚え)、改定資料が600ページほど(うろ覚え)。これらを関係部署がそれぞれ読み通して、自分に関係ある個所をもれなく検討しなくてはなりません。
しかもその行政手続きや請求要件について、4月になっても延々と「疑義解釈」をしているのです。第5次とか6次とか。
こんなんで設備投資や新規雇用計画が間に合いますか!?
どれだけ泣かされたことか。
介護報酬改定は3年ごと。
診療報酬改定と同じような作業が待っています。
そして、早ければ6年ごとに、ダブル改定がやってきます。
もうシッチャカメッチャカです。
しかも。
何とか対応して、爪に火を灯すように加算を集めて、ようやく投資(残業代を含めて)を回収したころ、次の改定(早ければ2年後)では、「やったら加算」から「やらなきゃ減算」に変わるのです…
「やって当然」とはしごを外すのです。
つまり。
やっと儲けが出たら「はい終わり~」なんですよ。
改定についていけなければ、減算の憂き目を見て「赤字」がチカチカとちらついてきます。
だから!
補助金や加算をぶら下げられたら、とりあえず飛びつかないといけないし、早く回収しないと消えるのです。
しかも!
人を雇っても改定で必要人員数が替わるかも…と思ったら、思い切った採用はできません。すなわち、人が足りない状態が慢性化しています!
できるやつから辞めていきます。
こんなサイクルが、病院経営陣には沁みついているのです。
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病院会計の特徴・まとめ。
内部留保に限界がある。
数年ごとに報酬体系は変わるので、加算とか補助金には素早く飛びつく習性がある。
というわけで、コロナ補助金・ワクチン補助金に病院・クリニックが群がるのは無理もないことなのです。
正気を保つのは至難の業なのです。
それこそ、食うや食わずでも従業員が辞めないか(私の今いる組織みたいに)、もともと行政に食い込んで、医療行政に影響力を持ち、先を見る力のある経営者でないと、やることは同じでしょうね。
(それ、インサイダーじゃないの?と思ったあなた…鋭い)
続きを書きたいけど、これだけでも十分気分が重くなりました…続きを書くかどうか未定です…